生まれたばかりの小さい人の名前はアキさんです。 二つの意味を込めて名付けたのでした。 出産の始まりは破水だったり陣痛だったりおしるしがあったりと人によって様々で、ワタクシ・ミユキの場合は破水から始まったのでした。 8日の夜中にちょろりと破水をし、入院となったのですがなかなか定期的な陣痛が来ずに二日間陣痛室と一般病室を行ったり来たりし、11日の午前2時57分に自然に出産。 破水をしたのだからすぐ産めるものと考えていたのですが、きちんとした陣痛が来ないと産めないって知らなかった・・・。 ちょうど入院時期が日曜・祝日だったため病院の都合で誘発は行われず、自然に産むことができたのでした。 この陣痛待ちの二日間は複雑な気持ちで過ごしていたのでした。 赤さんを早く抱きたくてやきもきする思いと(周りから聞こえる赤ちゃんの泣き声がこの思いを増幅させるのね)、遠くない将来お腹から赤さんが出て行ってしまう寂しい思いの二つがずっと頭の中を渦巻いていたのでした。 赤ちゃんを抱いているお母さんを見るとなぜか負い目を感じるし、破水で期待をさせてしまった三番目の兄さんにも申し訳ない思いでいっぱいだし。 今思えば貴重な二日間だけれど、その当時は本当に時間が長く感じられたのでした。 あれだけ自然に産気づけばいいなぁなんて考えていたくせに、あせるあまり手のひらを返すように「病院で産むって時点で自然じゃないじゃん!もう促進剤使ってもいいや」なんて思ったりしてね。・・・んもう、恥ずかしいなぁ。 やっと規則的にきた陣痛はこの世のものとは思えないくらい痛かったのでした。ぎゃー! 声を出さずにはいられなくって、助産師さんと腰をさする三番目の兄さんに助けられ9時間こらえたのですが、いや我ながらよく耐えた。 腰から電動ドリルで冷たく太いねじを埋め込まれている感じが定期的に続き、それが収まるとストン眠り、また陣痛が始まるとバチっと目が覚めて痛みで唸るの繰り返し。 助産師さんが言うには陣痛と陣痛の合間に眠ってしまうのはよくあることで(陣痛と眠りが飴とムチ的なことなのか?)、とても不思議な感覚だったのでした。 パパパパっとスライドショーのようにいろんな映像が見えて、ああ走馬灯ってこういう感じなのかも・・・とぼんやり思ったのでした。 そうこうしているうちに突然いきみたい願望に襲われ、それから一時間もしないうちにアキさんが生まれたのでした。 いきむってどうやるの?なんて思っていたのに、いきみたくなるなんて面白い。 出産も痛くて痛くて・・・。 赤さんが出てくるときって『にゅるん』と滑るように出てくるようなイメージがあったのですが、実際は『ゴリゴリ』とにがーい感触。 あまりの痛さに早く終わらせたく、一回のいきみで全部だしてやるくらいの意気込みで挑んだのですが、渾身の力でいきんでもスポンとは生まれず。当然だけど。 気持ちに余裕がないばっかりに「今のいきみで赤ちゃんがうずらの卵くらい見えてきたよー」と教えてくれている助産師さんの言葉を「これだけいきんでいるのにその程度?」とマイナスにとらえる始末。 せっかく出てきつつある赤さんがちょっと気を抜いた隙にボコっとひっこんでいく感触に何度もがっかりを味わったのですが、後々いきみ方がうまいとほめられたのでした。 陣痛と分娩を合わせて約10時間というこの記録も初産にしては早い方らしく、これもお褒めの言葉を頂いたのでした。 えへへ。早く痛みから逃れたくて必死だったのものでね。 ちなみに赤さんの頭が出てきたときに助産師さんが気を使ってくれて、頭を触らせてくれたのですがワタクシ・ミユキは早く終わらせたくて一度は断ったのでした。 断ったのに触らせてくれて、助産師さんどうもありがとう。 頭が出てきていることを実感できて、最後まで乗り切れたといっても過言ではないと思う。 さらにへその緒も自分で切る?と勧めてくれたのですが、それもお断りしたのでした。 こちらはなんだか自分と赤さんを繋げていたものを自分の手で立ち切っちゃうのが切なかったから。なかなかできない体験だとは思ったのだけれど。 自分は感激屋さんで出産のときにもきっと泣くんだろうなぁと予想していたのですが、実際は全く涙なんて出なかったのでした。 感動より驚きの方が大きかったのです。 「生まれたよ!」と助産師さんが言ったときも、「ほんぎゃー!」と産声が聞こえたときも、お腹の上に真っ赤なアキさんが載せられたときも、そのアキさんがお腹の上におしっこをしたときも全てが衝撃的で、ただただ驚いただけ。 こんな人がお腹の中にずっといたんだと思うと改めて驚いたのでした。 分娩台からよろよろとベッドへ移動し、三番目の兄さんが待っている隣の陣痛室へ移動するときにはどういう顔をしようと考えて・・・結局どういう顔をしたのだろう? その辺の記憶は曖昧。 けれども、その後すぐに助産師さんが胎盤とそれに付属しているへその緒を持ってきてくれて(これはワタクシ・ミユキの希望)三番目の兄さんに見せつけることができたのはしっかり覚えているのです。 「うわうわわ~」と胎盤を前に血の気が引いていく三番目の兄さんを見てにやにや。 三番目の兄さんには胎盤とへその緒に触れてももらったのでした。 付属しているへその緒は白と黄色のしましまでちょっと可愛らしくて、膜には破水したときに破れた穴もあったのでした。 こんなのがお腹の中にずっとあったんだなぁとしみじみ。今までありがとうと胎盤に声をかけたのでした。 母子同室の病院なので、アキさんとは生まれてからすぐに一緒のベッドで眠って朝を迎えたのでした。 三番目の兄さんは仕事のため朝4時頃に家に戻り、広い陣痛室にはアキさんと二人きりでとても静かな朝だったのでした。 窓の外の景色も不思議と昨日までとは違って見えて、明け方の透き通った空の青も、赤い朝日の当たったビルも遠くの山々もとてもきれいに見えたのでした。 ・・・すごく気持ちが高ぶっていたのだと思う。落ち着いていたつもりでも冷静ではなかったのだな。 その後はアキさんのお世話の他に沐浴実習、退院後の生活の指導や毎日の回診などで忙しい入院生活に突入。 自由な時間ってあまりなかったのでした。ちょっと隙があれば寝ちゃうのね。 三番目の兄さんは毎日パンを差し入れに持ってきてくれて、彼なりに喜びを表してくれてほんわり幸せだなぁと思ったのでした。 毎日誰かがお見舞いに来てくれたことも嬉しかったな。 義父さん・義母さんも重箱にお赤飯と栗を持ってお見舞いにやってきたのでした。 栗を病院に持ってくる人ってなかなかいないだろうなーと思ったのと、関係ないけれど栗って山の動物の恩返しのアイテムだなぁと思ったのでした。 今後栗を見るたびにこの日のことを思い出すかも知れない。 病室は母子同室でしかも4人部屋だったので、アキさんが夜泣かないかとても気になっていたのですが、そこはお互い様だし気にすることではないとすぐにわかったのでした。 というのも他の赤ちゃんの泣き声がうるさいなんて一度も思わなかったので。これは母性のなせる業か、仲間意識がそうさせたのか。 母子同室が退院後の生活の練習になったので私にとっては良かったなぁと思ったのでした。 お世話しているうちに湧き上がる疑問も少しは入院中に解決できたと思うのです。 他のママさんたちとも仲良くすることができたし、助産師さんたちのフォローも手厚くてとても安心して過ごすことができたのでした。 入院生活の最後の一日は同じ部屋のママさんたちが前日にみんな退院してしまって4人部屋に一人(+アキさん)と個室状態になってしまったのですが、それがもう寂しくて寂しくて。 思い出すと夢みたいな入院生活。 自分が退院するときもこれからの生活にわくわくする思いもあったけれど、やっぱり寂しかったな・・・。 助産師さんがわざわざアキさんにお別れを言いに来てくれたことも嬉しかったし寂しかったー。 これってきっといい入院生活が送れたってことよね。 あのフロアに自分が最近まで寝泊まりしていて、今も赤ちゃんを産んだばかりのママさんたちや、妊婦さんらが助産師さんたちとワイワイと過ごしていると思うととても不思議。 退院の日は朝から風が強くて雨が降っていたのだけれど、病院を出るときにはちょうど雨も風がやんで日が差してきたのでした。 アキさんや、これが外の世界だよと教えてあげたかったのだけれども、アキさんたらおくるみの中でぐっすり眠っていたのでした。 長くなったけれど、これが出産・ミユキの場合。なのでした。
by kurokurosusukoji
| 2011-10-22 15:10
| こども
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